リフレ派、大打撃

尊敬するbewaad氏が断筆宣言をするという事態に。
思えばリフレなるものを信ずるようになったのは氏によるところが大きい。リフレ派は故ドラえもんに続き貴重な人材を失ってしまった。

残るのは断筆の原因となった田中秀臣暗黒卿をはじめとする偏向し人格的に到底尊敬に値しない人間ばかり…Cool head but warm heartを体現する人から退場するというのはどうなのか…

高福祉高負担のための消費税の増税について

参院選自民党が消費税10%への増税を公約に掲げたそうだ。

消費税10%、自民が参院選公約に明記へ


自民党は3日の臨時総務会で、参院選公約の焦点の一つとなっている消費税の税率について、「当面10%とする」と明記することを決めた。

 来週中に正式発表する。社会保障費の財源として税率を具体的に示すことで、党内の消費税論議が進んでいない民主党との違いを訴えることにした。

 公約では、消費税率を現行の5%から10%に引き上げた上で、〈1〉消費税以外で賄われている年金・医療・介護の費用(7・3兆円)〈2〉社会保障費の毎年の自然増(1兆円)〈3〉基礎年金の国庫負担割合引き上げ分を含む社会保障の機能強化(7兆円)――などの財源に充てる方針を掲げる。引き上げ時期は「政権復帰時点で国民の理解を得ながら決定する」とする。消費税率は1%引き上げると、約2兆5000億円の税収増が図れるとされている。


http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/2010/news1/20100603-OYT1T00964.htm

ついに高福祉高負担の是非を実際に問われる日が来るわけだ。
確か前回の衆議院選挙の際にも消費税増税に触れていたと記憶しているが、今回ほど具体的な税率とその使い道は挙げていなかったように思う。
日本のあまりに低い国民負担率(ビリから5番目)、消費税による税収のGDP比の低さ(OECD諸国中最下位)を考えれば消費税増税は不可避である。


もちろん、所得税の累進性を上げるのもいいだろう。だが所詮そんなものでは足りやしないのだ。例えばこの文献を見ると累進性を1987年の水準に戻した場合7兆円程度の税収が見込めるという。なるほど、これは消費税に直せば3〜4%程度の税収に相当するだろう。
だが、それもよく見ると欺瞞があることに気づく。累進性云々というより当時の所得税の水準は、現在の所得税の水準より全体的に5%程度ほど高いのである。とすれば、給与所得者にとっては消費税5%上げられるのと変わらないうえに、税収は低くなってしまうのだ。まさに踏んだり蹴ったりである。

全体的に5%上げたとしてもこのありさまだとすれば、仮に高所得層の累進性を高めるだけで済まそうとした場合、たいした税収増にならないことは明らかだ。

消費税増税を封じた挙句、低福祉への道をひた走る某政党の失墜と、遅きに失した感があるが、野党に転じてようやくまともな政策に目覚めつつある自民の勝利を切に願う。日本の福祉のために。

日本のTWR(Traveling Wave Reactor)CANDLE

本日東芝がTWR(Traveling Wave Reactor)のTerra Power社と協力していく旨のニュースが流れていて喜んでいたら、このブログも妙にアクセスが増えていて驚いた。

せっかくだから、少しだけ補足情報を書いておく。


さて、先に紹介した(id:ColdFire:20100213)TWRだが、Terra Power社の資料を見てもわかるように、実はこれと同様のものが東工大で研究されている。

研究しているのは東工大原子炉工学研究所の関本先生。
こちらではTWRはCANDLEと呼ばれているのだが、原理はほぼ(いやまったく)同一のものである。

CANDLE、あるいはTWRの解説として、日本語で読める中ではもっとも詳しい一般向けの解説が関本先生の著したこの冊子"蝋燭に灯を点せ"だと思われる。
一般向けと言っても相当ハイレベルな読者を想定しているが、技術的なことに興味がある人間には一読の価値はあるだろう。


残念ながら関本先生は来年度で退職なさるとのことで、この研究がこれからどうなってしまうのか不安なのだが…後継者はいるのだろうか?

ベーシックインカムと経済成長 -飯田プラン考察 その2-

さて、前回(id:ColdFire:20100205)の続きで飯田泰之先生のプランを考察してみよう。ベーシック・インカムの話と直接関連はしないようなのだが、飯田先生は経済成長で得られた税収を福祉に充てようと提案している。

 2%のインフレと実質2%成長をあわせて、毎年のGDPの金額が4%伸びると国税収入は4.4%程度上昇する。
さらに所得税累進課税をかつての水準に戻せば、経済成長による税収の向上はより大きくなる。
現在の国税収入は50兆円。4%の名目成長は、毎年の国の税収を2.2〜2.5兆円増加させるので、早ければ5年後、遅くとも10年後には、現在の税制に手をつけなくても10兆円の財源をつくることができる。
 そして、<日本の経済成長を取り戻すための必要な政策と、低所得者への再分配は両立しうる>とし、当初は10兆円の生活保護拡大・育児手当支給を、政府による紙幣発行や国債発行によって行い、インフレの発生と税収増に従って、徐々に税収へと財源の軸足を移していく。
このようなプロセスを経ることにで、10年後には税収によってよりよいセーフティーネットを用意する準備が整う。


雨宮処凜・飯田泰之『脱貧困の経済学 日本はまだ変えられる』


インフレターゲットの実現可能性はこの際おいておくとして、当ブログ主が知る限りでは、経済成長による税収の増加は、所謂リフレ派の文脈の中では財政再建案として提示される。例えばbewaad氏の名エントリ「リフレ政策に勝算ありや」はリフレ派の一人として忘れることはできない。飯田先生はリフレ派の代表とも言える経済学者なので、それを知らないはずもない。しかしこれを福祉の財源に充てようという主張はなかなかユニークと言えよう。

だが、発想元がわかってしまうと、その弱点もすぐさま露呈してしまう。そう、当ブログ主もあえて言及を避けてきたのだが、財政再建の問題である。現在我が国の財政状況は最悪であり、増税を考えるならば、まずなにより財政赤字の補填に当てる必要があるのだ。したがって経済成長により自然に増えていく税収はBIに使われるより先に、赤字の補填−すなわち国債発行額の削減−に充てられてしまうのは自明だろう。これがBIに回される日は、財政状況が好転した後、おそらくは財政のプライマリーバランスが回復した後なのだ

飯田先生は経済成長による税収が得られるまでは国債発行を増額せよと主張しているが、これも現在の国債発行額をみる限り、現実的ではない。すなわち飯田先生のアイディアは現時点では実行不可能だと言えるだろう。

ただBIが実現される日は、あったとしても遠未来の話なのでそのときには有力な選択肢になっているかもしれない。

ベーシックインカムと公共事業費再考

前回(id:ColdFire:20100131)公共事業費について論じた際に、データとして国民経済計算の一般政府固定資本形成を用いたのだが、これは実は適切ではなかったかもしれない。なぜならこの区分では土地代が含まれないからである。日本は地価が高いので、これを含めないと本当の値はわからないかもしれない。というわけで、今回は土地代も含めた公共事業費を考察してみよう。

データは総務省が公表している「平成18年度行政投資実績の概要」から持ってくることにしよう。ただこのデータは更新スピードが遅く、現時点では平成18年度のデータしかない。したがって、最新のデータは国民経済計算のデータを用いて推定することにしよう。

上記「平成18年度行政投資実績の概要」によれば、平成18年度においては、公共事業費(土地代込み)は241,518億円である。

これと相関関係にある国民経済計算(一般政府の固定資本形成)を使用して、平成20年度の公共事業費(土地代込み)を推測する。一般政府の固定資本形成の増減率と、「行政投資」の増減率が同一とした場合、平成20年度の公共事業費(土地代込み)は、約219,112億円である

前回用いた値は約15兆円であった。しかし土地代を考慮すると約22兆円になることがわかる。

前回は、GDP比で0.6%にいたるまで公共事業費を圧縮し、12兆円を捻出することでBIの約10%をまかなうことが可能(かも)と結論したが、この比率をそのまま用いれば、12兆円でなく、GDP比で公共事業費を0.6%にまで圧縮することで、17.6兆円を捻出することができる。これはBIの約15%に相当し、それなりの金額ということはできるだろう。もっとも、こんなに減らしたら国土はガタガタだろうが。

Traveling Wave Reactor −これからは原子力の時代だ!−

前回は宇宙開発を取り上げたので、今回も当ブログ主が趣味として愛する原子力関連技術の話題を一つ。

日本では完全に無名だが、Traveling Wave Reactor(トラベリング・ウェーブ・リアクター:進行波炉なる原子炉がある。原理自体はかなり昔からあるのだが、最近これを商用化せんとするベンチャー企業が登場して(一部で)話題になった。

企業の名はTerraPower LLC。Interectual Ventures社の子会社として2006年に設立されたベンチャー企業である。

ではTraveling Wave Reactorとはどんなものであろうか?
          

          
  TR10: Traveling-Wave Reactor - MIT Technology Reviewより

特徴はいくつかあるが、顕著なものはここここに記載されているように、
1.劣化ウランU238)を燃料とすることが可能なので、従来は核燃料を精製する際に廃棄物として捨てられていた副産物を燃料とできる。廃棄物は世界中に大量に貯蔵されているので燃料には困らない。
2.核分裂性物質(U235)が必要なのは点火時のみ。
3.一旦燃料に点火すれば、燃料供給も、使用済み燃料の除去もなしで50〜100年(理論上は無限に)動き続けることができる。
4.核燃料の精製施設、再処理施設が不要
5.ウラン濃縮が不要なため核兵器の拡散を防げる

あたりだろうか。これにより低コストで安全、そして持続可能な核エネルギーの供給が可能になるのである。


何故”トラベリング・ウエーブ(進行波)”なのかといえば、これはここにある動画を眺めればわかるように、燃料の中を”Breeding(燃料生成)"とそのすぐ後の”Burning(燃焼)”の波がゆっくりと進行していくことによる。

3.24.2010 追記:上記の動画はYoutubeにもアップされていたので貼り付けておく。進行波の様子は50秒目から。
 


バックボーンとなる物理学は、原理だけであればそう難しいものではない。やっていることは燃料を生成しながら燃焼していくのである。

例えば、ウラニウム系の反応を式で表せば、下記のようになる。

U238+n→U239→Np239+β→Pu239+β

まず燃料親物質となるウラニウム238が高速中性子を捕らえて不安定なウラニウム239になる。これはすぐに崩壊して同様に不安定なネプチウム239とβ粒子になる。さらにそれが崩壊して核分裂性のプルトニウム239となる。最終的に生成されたプルトニウム239が核分裂し、エネルギーと中性子を生成し、その中性子が再びウラニウム238がウラニウム239になるのに使われるわけだ。


米国には核燃料精製時に使用した劣化ウランが大量に貯蔵されており、Terra Power社によればそれは100兆ドル相当(2007年)の電力になるらしい。また世界人口の80%に対し、米国の一人当りの電気使用量で1000年以上に渡って電力を供給できるだけの劣化ウランが世界にはあるという。


またTerra Power社は100〜300MW級の小型の反応炉と、1000MW級の大型の反応炉を研究中とのこと。

最後に肝心の開発スケジュールであるが、今後10年以内にデモを行い、15年以内の商用化を目指すとのこと。

まだまだ研究中の技術であるが、頑張ってもらいたいものである。当ブログ主は大いに期待している。